6月議会質問 原稿

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【北陸新幹線金沢開業を控えて】
北陸新幹線金沢開業まで10ヶ月を切りました。1987年、高崎―小松間フル規格を閣議決定してから実に30年近くも経過したわけです。これまで開業にご努力を頂きました関係各位の皆様には心からの敬意を表したいと思います。また、県においても市においてもこの間に様々な努力を積み重ねてきましたが、我々の仕事はこれからが本番と言えるでしょう。約30年を費やして開業にこぎつけた北陸新幹線は、我々市民県民の生活を豊かにするものでなくてはなりません。故に新幹線金沢開業は万全の上にも万全を期せねばなりません。新幹線が開業した事によって明暗が分かれた都市の例はいくつもあります。新幹線にはまちそのものを変えてしまう力があるのです。
大手の資本が入り、一見都会的なセンスでおしゃれな店が建ち並び、街が洗練されたように見えても、それまでの伝統や文化を無視した建物は、これまでの雰囲気や情緒を無くした上に、商店街の絆さえも断ち切ることがあります。また、週末ともなりますと大勢の観光客が訪れて、ここは原宿か渋谷か?と見間違うような光景が広がっています。本市においても、各名所がこのような様相になる危険性が多分にあるように思います。それを回避するには、なるべく人を分散させ、混雑を防ぐ方策を考えなければ、いわゆる金沢らしさが失われてしまう恐れがあります。
先日、あるホテルの支配人に「来年の予約状況はどうですか?」と訪ねましたところ、「週末はたくさんの予約を頂いていますが、平日はまだまだ空きが目立ちます。」との返答でした。現在でも週末は混雑している本市ですが、コップ一杯に張られた水にそれ以上の水が入らないのと同じで、本市の客室数8千室。ベッド数1万3千個のコップの水は、今でも週末は満杯状態です。県は関東方面からの来街者が現在の240万人から500万人になると予想していますが、増えた分の観光客の多くは週末にやって来ると思われます。その数は関東方面からだけで一日2万人から3万人と予想しているところもあります。
この事から本市の週末状況を推測しますと、午前9時から12時の間に続々と観光客の方々が金沢駅に降り立ち、金沢駅はものすごい数の人たちで埋め尽くされるでしょう。そして、その方々は、バスやタクシーなどを使い、兼六園や東茶屋街などへ向かいます。この時、本市の時間帯交流人口は、午前11時から午後3時頃がマックスになると思われます。その後、午後3時頃を過ぎたあたりから、本市に宿泊が取れなかった方々が宿泊場所へ移動を始め、夜はこれまでと同様の賑わいになると思われます。
このような場合なった時の、三つの懸念を指摘します。
一つ目は、午前11時から午後3時の時間帯に、各名所は溢れんばかりの人たちで原宿竹下通りや渋谷スクランブル交差点状態になる恐れがあり、この事によってまちの風情が失われるのではないかという懸念。加えて、金沢駅でも同様の混雑が予想される事から、案内所や案内板などの機能強化が求められるところです。
二つ目は、その賑わいに目をつけた中央の企業が投資をし、どこの観光地でも見られる店が建ち並び、町並みが壊れてしまう懸念。
三つ目は、関東方面からだけでも、週末に2万人も3万人も来て頂いたところで、泊まれる人数は、せいぜい1万人ですから、多くの方は本市に泊まれません。その事から、宿泊や飲食などの経済効果の増加は、思ったより期待出来ないという懸念。未だ金沢開業効果に疑念を持っている方が少なくないのは、限定的な経済効果になるのではという心配があるからです。
風情が壊れる懸念。町並みが壊れる懸念。限定的経済効果になる懸念があると指摘しましたが、これら三つの懸念を解消する方策として、二次交通の利便性を高めるとともに歩行者の回遊性を高めるなど、一日の賑わいをコントロールする事や平日のコップを満たす事が必要だと思いますが、市長の考えを伺います。

次にソフト面について質問します。
私は観光とは異文化との出会いだと定義しています。非日常的な体験が観光の醍醐味です。その意味からしますと本市の非日常的な体験とはどのようなものを指すのでしょうか。ひとつ注意したい事は視覚で訴えるものは、よっぽどの完成度と希少価値がなければ限界があるということです。どういう事かと言いますと、ルーブル美術館のモナリザの肖像画を見ることは非日常的体験ですが、5回も10回も見たいと思う人は学芸員か研究者しかいないでしょう。しかし、ディズニーランドという非日常的空間には100回以上行ったことがあるという方は何人もいます。この違いは、見るだけのものと体験する事の違いです。「ディズニー7つの法則」という本では、「夢と魔法の王国」という想像の国を演出し、非日常の空間を徹底的に作り出し、あたかも自分がそこに存在しているかのような体験が出来るのがディズニーランドであると述べています。本市には幸いたくさんの非日常空間や非日常体験が出来るコンテンツがあります。そして、これまでこれらを見たり触ったり体験するプランを提案してきました。それらを体験した観光客の満足度は非常に高いものがあります。課題は、今後増える観光客に対して、一人でも多くの方に非日常を体験してもらえるかということです。繰り返しますが、モナリザの肖像画でさえ、何度も訪れる方がどれくらいいるのだろうという中で、見た目だけの街の美しさを追求しているだけでは、リピーターを増やす事は出来ません。あくまでも観光の醍醐味である非日常的体験をする事こそが、観光客の満足度を高めリピーターに繋がるとともに、結果的にまちの魅力を向上させるのです。
本市の非日常の代表といえば、武家文化に接するということが挙げられます。茶屋街をそぞろ歩きをし、武家屋敷跡を散策するだけで、タイムスリップした気になります。芸子さんに接することも然りです。しかし、人で溢れ返った茶屋街を歩いてもタイムスリップする事は出来ません。やはり、非日常を体感するには賑わいのコントロールが必要でしょう。
本市では、どのような非日常的体験を提供出来るのでしょうか。考えている内容をお伺いします。
ちなみ、ディズニーランドは毎日人で一杯ですが、その魅力は失われていません。その秘訣を探りに、一度執行部と共にディズニーランドへ行かれてはどうでしょうか。

次に受け入れ体制の心構えについて質問をします。
九州新幹線の成功の秘訣はなんだろうと探っていますと、それは住民による歓迎とおもてなしだという事が分かりました。九州新幹線沿線都市の住民は心からの新幹線開通を喜び、来街者にその想いを形にして表しました。それは九州新幹線の幻のCMといわれた映像を見れば住民の想いが伝わってきます。市長はこのCMをご覧になったことはありますか。九州新幹線沿線都市の方々同様、我々住民一人一人が北陸新幹線金沢開業を心から喜ぶ事が、これまで30年以上も金沢開業にご努力を頂きました方々や、その新幹線に乗って来られる方々に向けて、もっとも喜ばれる要素ではないでしょうか。受入側の我々が心底開業に喜びを持てれば、来られた方々も来て良かったとなる事でしょう。金沢は歴史・伝統・文化が素晴らしく、町並みも綺麗だ。そして、何よりも人が一番素晴らしかったと言われることを目指しましょう。
このようになるには、市民の機運を高める必要がありますが、その方策をお尋ねします。

続けて、受け入れ体制という点で質問を二つします。一つ目は外国人に対しての受け入れ体制です。市長は提案理由説明の中で、「外国人観光客等の受け入れ環境の整備について議論を重ねます。」と述べていますが、本会議でも度々議論されます公衆無線LANについて質問をします。世界から人を呼び込もうとする時、無線LANの存在は大きなポイントになります。先ほどのホテル支配人によりますと、海外からの予約において、無線LANが整備されているかいないかでは、予約に大きく影響するとし、整備されていないホテルは、予約を頂きにくいと言っていました。私も海外には度々行きますが、無線LANがあるかないかでは、滞在中の快適さに大きな違いが生じます。電話をするにしても地図アプリを見るにしても、また観光アプリを利用しようとしても無線LANがないと高額な通信費がかかってしまうことから、外国人にとって無線LANは必須であるわけです。本市においては、建物内はかなり普及してきたと聞いておりますが、屋外での普及率といいましょうか使える面積というのは、今後どのように拡大していくのでしょうか。今年度は、金沢駅東口もてなしドームや21世紀美術館周辺を整備することになっていますが、今後のエリア拡大計画を聞かせて下さい。

二つ目が学生に対しての受け入れ体制です。
私はこれまで、修学旅行生や課外授業で本市を訪れる学生たちが、雨風をしのぐ場所がないことを問題視し、本会議において何度か質問をしてきました。大人であれば急な雨風でも喫茶店に入るなどの対応がとれるのですが、土地勘の無いまちに不慣れな子供たちにすれば、そのようなことはなかなか出来ないものです。
課外授業で本市を訪れる学生達は、班に分かれて、それぞれで組み立てたコースーを巡り、昼食時にはほとんどの班が中央公園に集まり、お弁当を食べるというものです。その時に雨や強風に見舞われますと中央公園でお弁当を食べることが出来なくなるほか、真夏の炎天下の下でも条件は同じことです。「弁当忘れても傘忘れるな」と言われるくらい雨が多い本市では、昼食が食べられない事態を想定して、引率教員の中には、課外授業の場所を本市から高岡市へ変更する学校も出てきているように聞いています。学生を呼び込む事は、平日の賑わい対策になる事に加えて、リピート率が高い事から、学生対応は重要な課題です。故に学生たちが安心して快適に本市を散策出来る環境整備が必要だとこれまで訴えてきたわけです。直近の答弁では、ラブロの3階に観光案内所があるので、そこを利用して欲しいとの答弁でしたが、そのラブロは現在解体工事中です。新たな場所が必要になってきました。しいのき迎賓館や庁舎ロビーなど工夫して提供出来ないものでしょうか。また、庁舎前広場を改修する計画がありますが、雨天対応が出来るように考えて見てはどうでしょうか。雨に打たれている子供たちを見ますと本当に心が痛みます。市長にも痛みが通じると良いのですが、考えを伺います。

【金沢子供読書推進プランについて】
山野市長は、市長就任時から、学校図書館司書の配置増員を積極的に推進してこられました。この効果でしょうか、市内小学校図書館の児童1人当たりの貸出冊数が、5年前に比べ2.5倍の一人平均60.5冊となり、中学校では2.8倍の8.9冊になりました。まずは、この結果の評価を野口教育長はどのように見ておられるのか聞かせください。
数字が伸びていることは、誠に結構なことですが、近隣の市と比べますと手放しで喜べないことが分かります。お隣の野々市市の平成25年度の学校図書貸出件数は、児童一人当たり85.8冊。中学校では15.1冊であり、白山市の平成24年度の実績では児童が114.7冊。中学生が34.3冊と、児童は本市の約2倍、中学生では約4倍にもなっています。ただ、このような数字を競っても意味がありませんが、他都市の取り組みを参考にし、本市で活かすということはあって良いと思いますので、これら他都市の数字をどのように分析しているのか再び野口教育長に聞きます。
子供たちが多くの本に接することは豊かな心の醸成と多様性を身につける上で大変素晴らしい事だと思っています。その一方で、どのような本に接するかということは重要な事です。なんでも読めば良いというものではありません。健全育成の観点から、有害図書の排除は必要な事です。未成年の携帯電話ではフィルタリングが掛けられているように、子供たちが読む本にも当然フィルタリングを掛けるべきと思っています。昨年12月の「教育消防常任委員会」で黒沢委員が、「学校図書において、学校長や図書選定委員会の自主的な判断に任せるのではなく、教育委員会としての一つの指針を出すべきではないか。」と指摘をしました。この指摘に対して野口教育長は、「学校図書の選定において、ある程度の指針が必要と思うので、今後検討していきたい。」と答弁され、本年3月開催の同委員会にて「金沢市立小・中学校図書館資料選定基準」というものが示されました。この内容を見ますと、描写についての記述がありませんでした。幼少期に残虐なシーンを見るとそれがトラウマとなって将来の人格形成に悪い影響を及ぼすということは、脳内心理学の分野において説明がついています。故に日本のテレビや新聞など公共性があるメディアでも、過激描写を控えているのです。当然、学校においてもこの考え方が当てはまるものと考えており、たとえ教育的内容の本であっても、あまりにも過激で見るに堪えない描写の本は規制するべきです。示された選定基準に対して、黒沢委員は「公序良俗に反するものも例示として載せないのか。」との指摘に「金沢市学校図書館協議会と再度協議を行い、検討していきたい。」と答弁をしました。再度の協議という事ですが、野口教育長は本市の小中学生3万5千人余りの教育を預かる最高責任者です。描写のフィルタリングを掛けるのか掛けないのか、はっきりとした方向性を示してください。教育長が方向性を示さない限り、現場が混乱してしまいます。私は、健全な大人なら誰しも子供たちに有害な図書に接して欲しくないという気持ちを持って然るべきと思いますが、描写に関しての明確な指針が示されないのは、内容と描写を混同しているからではないかと推察しています。内容と描写それぞれに選定基準を設けるべきです。そこで、描写に関してはR15指定を基準にする事を提案します。R15指定とは、どのような目的の内容であれ、ストーリー内でワイセツシーンや暴力行為が何度も出て来るものを示す用語です。R指定にはこの他にも、R12であるとかR18といった用語がありますが、それぞれに内容が違い、学校図書のフィルタリングにはR15がもっとも適していると思っています。このR指定という用語は、日本社会で広く浸透しているもので、本市の学校現場で用いてもなんら不自然な事ではなく、保護者からの拒否感もないものと思います。本市が関係する図書施設において、R15指定を適用する考えはありますか?考えを伺います。

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